介護職員でも医療が可能に!介護職員による喀痰吸引等の研修について解説!
介護の仕事をしていると、
早く看護師さん来てよ!
というときありますよね。
夜勤などで痰が口の中にたまっている、経管栄養がすでの終わっているのにチューブを外せないなど経験がありませんか?
今回は喀痰吸引と経管栄養法が介護職も認められる、「介護職員等による喀痰吸引等の研修」について説明していきます。
最後まで見ていただければ、研修を受けたい方は受けるメリットをはっきりさせて、職場に研修受講の打診ができたり、管理者の方は職員さんに研修受講を進めやすくなります。
ぜひ最後まで一読いただければ幸いです。
では見ていきましょう。
介護職員が医療行為は違法なのでは?
介護職員等による喀痰吸引等の研修(以降は喀痰吸引等研修とします)は
- 咽頭までの喀痰吸引(気切部の吸引を含む)
- 胃ろうまたは腸ろうからの経管栄養、または経鼻経管栄養
の2種類があります。
この行為を行うためには医師や看護師の国家資格が必要になってきます。
しかし日本は医師・看護師不足が問題視されており、いつでもどこでも駆け付けられるとはかぎりません。
特に在宅で過ごされている方であれば、なおさらです。
医療者不足のニーズを満たすために、「実質的違法性阻却論」により平成17年から在宅療養者に介護職員による喀痰吸引や経管栄養の施行が可能になりました。
特定と不特定多数の違いは?
同じ研修でも「特定」と「不特定多数」と書かれたものがあります。
何が違うのか解説していきましょう。
特定
こちらは特定された方のみに実施が可能な研修になります。
基本的な内容をぎゅっとまとめた内容になっていますので短期間ですみます。
しかし誰でもできるわけではなく、申請を出した利用者にしか行うことができません。
そのためその利用者が亡くなられたり、経管栄養の必要性がなくなると使えなくなってしまいます。
「特定の方の喀痰吸引・経管栄養の研修」という認識ですね。
不特定多数
こちらの研修は長期間になりますが、専門的な知識まで身に付きます。
終了すれば、主治医が必要と判断し指示書を発行した利用者に実施することができます。
そのため半永久的に認定証が使えることになります。
どちらも普段の様子と変わりがない状態であることが条件ですので、主治医と看護師との連携が必要になってきます。
介護職員単独の判断で行うことはありません。
研修の内容と流れ
喀痰研修は
- 喀痰吸引等研修の終了
- 介護福祉士養成課程では医療的ケアの科目を履修
の2パターンにわかれます。
平成27年までの取得者や訪問介護員(ヘルパー、初任者研修終了者)は喀痰吸引等研修の基礎研修を終了し、実地研修を終了すると認定特定行為業務従事者として医療的ケアを認定された分野のみ行うことができます。
平成28年以降に養成所を卒業し、介護福祉士を取得した方は喀痰吸引等研修の基礎研修を免除となり、実地研修のみになります。
受講者の多い、不特定多数の研修の流れを見てみましょう。
①喀痰吸引等研修受講
(H28年以降に介護福祉士養成所を卒業後、介護福祉士取得された方は実地研修のみ受講)
②基礎研修を受講する
講義(50時間)と演習(6行為)を含む内容
演習(デモ機を使用した演習)
- 吸引…口腔内吸引、鼻腔内吸引、人工呼吸器装着者の気切部からの吸引
- 経管栄養法…胃ろうからの経管栄養、経鼻経管栄養、半固形化栄養材の注入
③実地研修
実際の利用者へ希望する内容の項目を指導看護師とともに規定回数実施する
④認定証を交付
全課程が終了したら指定された場所へ申請を行い、「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受けます。
⑤実施
安全委員会の設置やマニュアル作成をし、主治医の指示のもと認定証を交付された職員が一人で実施できる
結構長い道のりですね。
しかし医療の専門職ではない介護職が医療行為を行うのですから、必要な時間だと感じています。
費用はどのぐらいかかる?
喀痰吸引等研修のまとめ役は都道府県です。
都道府県から認定証の交付を受けるようになるため、費用も都道府県によって分かれてきます。
都道府県から社会福祉協議会などに委託して実施される場合であれば、低予算で開催することが可能なため、費用も無料~数千円という場合があります。
しかし民間企業が独自に行っている研修の場合には数十万となることがあるので要注意です。
研修を終了するメリット・デメリット
では喀痰吸引等研修を職員が受けるとどうなるのかを見ていきましょう。
メリット
- 喀痰吸引・経管栄養を介護職員で行うことができるので
- 痰で気道を狭窄、閉塞する危険が少なくなる
- 気道が通り利用者が苦しむ時間が短くなる
- 喀痰の誤嚥による誤嚥性肺炎などを予防することができる
- 看護師がいる時間に終わらせなくていいので、個別に時間や量を調整しやすい
- 長い時間、栄養点滴チューブにつながれてなくてもよくなる
- 多くの目で注入中の確認が可能になる
看護師は介護職員に委ねて、看護が必要な方に時間を取ることができます。
介護職員は看護師を探さなくてよくなり、ケアの時間調整も自身で可能になるので業務がうまく回ります。
介護職員の仕事を増やすのかとよく聞きます。
しかし実はおむつ交換の時間などの介護業務のタイムマネジメントが可能になるので、実質的には仕事が早く終わるようになります。
デメリット
- 低圧で咽頭までしかチューブを挿入できないので粘稠痰や奥にある痰は取れない
- 出血や低酸素状態になったときに対処が難しい
- 胃ろうの状態観察や経鼻チューブの確認は看護師が行う必要があり、結局看護師が注入までやることになる
- 薬の注入は基本的にはNGのため、注意が必要である
デメリットはあまり感じませんが、リスク管理の観点ではデメリットは多いです。
また書類の作成や報告書、指示書の準備など看護師や医師にかかる負担も多くなります。
看護師の業務軽減にはなっていないように感じているのが現状です。
介護職員でも医療が可能に!介護職員による喀痰吸引等の研修について解説!;まとめ
介護職員による喀痰吸引等の研修を受講すると、
- 咽頭までの喀痰吸引
- 胃ろうまたは経鼻チューブの経管栄養
を実施することが可能になります。
介護職員が医療的な行為をすることは法令では違法ですが、研修の終了と認定証の交付を受ければ、実質的違法性阻却論により合法的に行うことができます。
H28年以降に養成所を卒業した方は実地研修を受講すれば同様に認定証の交付をうけることができます。
利用者にも安楽に生活するためのメリットがたくさんありますが、リスク管理を徹底しておく必要があります。
安易に看護師の業務を軽減しようとすると、逆に書類業務などが多くなってしまうこともあります。
導入にはきちんと安全委員会の設置や家族の同意、主治医との連携が必要です。
費用については、都道府県から委託を受けている団体(社会福祉協議会など)は無料で受講することも可能です。
(各自治体によりますのでお問い合わせください)
民間企業などが開催するものには数十万かかる場合もあるので、申し込む前に必ず確認が必要です。
いかがでしたでしょうか?
喀痰吸引等研修は介護職員にとってもスキルアップできて、利用者にも還元しやすい資格になります。
しかし専門外のことをするということはそれなりにリスクを伴います。
しっかりとリスク管理を行ったうえで安全に実施できるようにしましょう。