介護職員もできる?現場で勘違いしやすい医療的ケアのポイントを解説!
介護職員でもある一定の条件をクリアすれば医療的ケアを実施することができることをご存じでしょうか?
平成15年ごろから徐々に広がり、平成23年6月には士士法の一部改正で介護福祉士の養成カリキュラムにも医療的ケアという項目が追加されています。
介護職員でも医療的ケアができるようになったのはとてもいいことだと思いますが、内容が少しややこしいのが難点…
ということで今回は医療的ケア研修の指導看護師で研修講師を務める私が、実際に現場で実施するとき勘違いしやすいポイントをまとめました。
最後まで読んでいただければ、安心安全に医療的ケアを実施することができ、利用者さんの苦痛を軽減できます。
ぜひ最後まで一読ください!
医療的ケアとは?
そもそも医療的ケアって何かを説明します。
医療的ケアというのはもともと医療職でしかできないケア(医療行為)のことを指します。
本来であれば医師や看護師しかできない行為です。
今回の介護職員が行える医療行為は、
- 口腔内吸引
- 鼻腔からの吸引
- 気管カニューレからの吸引
- 胃ろう(腸ろう)からの経管栄養
- 鼻に入ったチューブからの経管栄養(経鼻経管栄養)
- 胃ろう(腸ろう)からの半固形化栄養剤の注入
の6行為となります。
介護職員が医療行為をしたら違法なのでは?
先ほども少し触れましたが、介護職員でも一定の条件を満たせば違法にならず医療的ケアを行うことができます。
実施するにあたり、区分が第1号~第3号まであります。
第1号と第2号は「不特定多数」という区分になります。
不特定多数は特定の利用者だけでなく、医師の指示書や本人・家族の同意があれば誰でも実施が可能となります。
第3号は特定の利用者だけになりますので、カリキュラムも不特定多数よりもすごく少ないです。
今回は不特定多数の研修にフォーカスして説明していきます。
一定の条件ってどんな条件?
第1号、第2号のある一定の条件というのは、
- 国が定める研修の講義50時間と基本研修(演習)、実地研修を終了する
- 介護福祉士養成所などのカリキュラムを受講し、実地研修を終了する
- 介護職員実務者研修の受講を終了し、実地研修を終了する
などがあります。
座学が50時間の後に基本演習と実地研修があるとなると数カ月単位の研修になります。
基本演習では6行為を5回ずつ実施し、各行為の5回目は手順書などを見ずに実施できたらクリアになります。
実地研修は実際に利用者さんに対して行い、希望する行為を各20回(口腔内吸引は10回)を指導看護師のもと行います。
医師の指示書に沿って行われるため、一日に実際の利用者さんでできる回数はたかが知れています。
実地研修では最終3回は何も見ずに実施でき、かつ何も見ずに実施できた割合が70%以上という条件があります。
演習・実地研修をクリアするのは身体的にも精神的にも苦痛です。
私の経験だと見ている指導看護師との相性がいい方はすぐにクリアできます。
相性が悪かったり、そこまで仲が良くないとなかなかクリアできないペアも出てくる印象がありますので、ぜひ看護師さんへゴマをすって演習に望んでください。
間違えやすい制度の決まり事
それでは間違えやすいポイントを解説していきます。
実際には知りませんでしたでは済まないことにも繋がるのでしっかり把握しておきましょう。
看護師の判断で勝手に実施してしまう
看護師の判断で誰彼構わず実施できるわけではありません。
これは指導看護師ではない人がしてしまう場合が多いです。
指導看護師の研修を受けていれば、それなりに注意する点や必要書類なども把握できています。
しかし指導看護師の研修を受講していない看護師の中には
「あの介護さんは研修終わってるからどの利用者さんでも吸引頼めるね!」
と勘違いされている方もいらっしゃいます。
医療的ケア実施については
- 医師の指示書
- 家族の同意書
が必要となります。
看護師の判断では実施できませんので気を付けてください。
環境の整備ができていない
研修が終わったからと言って、誰に行ってもいいわけではありません。
- 吸引や経管栄養の計画作成
- 施設に安全に実施できるよう「医療的ケアマニュアル」の作成
- 医師を含めた「安全委員会」などの立ち上げ
- 事業所を都道府県への登録特定行為事業者として登録する※1
※1医療機関は対象外
など介護職員が安全に実施でき、何かあった時でも施設が職員を守れるよう準備が必要です。
看護師だけではなく施設全体で実施できる体制を整えていく必要があります。
医師や指導看護師以外の看護師は詳細を把握していない
前項でも説明した通り、看護師でも医療的ケアの制度をわかっていない方が多くいます。
医師も指示書を作成する立場にありますが、しっかりと把握していない医師も少なくありません。
指導看護師が介護職員だけでなく、職場・他看護師・主治医へも周知していく必要があります。
吸引・経管栄養の実施で気を付けるポイント
介護職員が医療的ケアを行えるメリットは多々ありますが、介護の専門性はあくまでも生活の支援です。
医療的ケアが可能になったからと言って、看護師と同様のことができるわけではありません。
そのため混同しやすいポイントについてまとめました。
実施する場合には注意して行うようにしてください。
喀痰吸引
挿入は咽頭手前までが原則
介護職員が行うとき挿入していいのは咽頭の手前までです。
咽頭まで達してしまうと、咳嗽反射が起こり嘔吐の原因となります。
また医師の指示で「〇cmまで」と書かれているものはそれ以上挿入できません。
吸引圧を高くできない
指示書に記載してある吸引圧で見て、出なければなりません。
吸引したい痰が粘り気の強いものであったりすると、圧に限界があり取り除くことが難しい場合があります。
そのような場合でも介護職員が勝手に調整することはできませんので、看護師が吸引することになります。
経管栄養
胃ろうの状態次第でできないことがある
介護職員による医療的ケアは基本的に「異常がなく、医師が指示書を作成した利用者」が対象になります。
胃ろう周囲から出血していたり、皮膚と癒着しているなど異常が見られる場合には一度医師の確認が必要になります。
胃ろうを回転させることはできない
たとえ出血や癒着がなく、異常がない胃ろうでも回すことはできません。
医療的ケア実施前に一日に一回は看護師が確認しなければなりませんので、その時に回転させて繋ぎやすい位置にしておくことが必要です。
経鼻カテーテルは毎回確認が必要
胃ろうの場合は一日に一回のみの確認で大丈夫ですが、経鼻カテーテルの場合は実施前に毎回確認が必要です。
経鼻カテーテルが抜けていたり、食道に入らず気管に入っていたら大変ですから。
介護職員もできる?現場で勘違いしやすい医療的ケアのポイントを解説!:まとめ
医療的ケアというのはもともと医療職でしかできないケア(医療行為)のことを指します。
本来であれば医師や看護師しかできない行為ですが研修を終えた介護職員は、
- 口腔内吸引
- 鼻腔からの吸引
- 気管カニューレからの吸引
- 胃ろう(腸ろう)からの経管栄養
- 鼻に入ったチューブからの経管栄養(経鼻経管栄養)
- 胃ろう(腸ろう)からの半固形化栄養剤の注入
の6行為が実施可能になります。
しかし一定の条件のもとでの実施になるので、看護師の医療行為と同じレベルでできるわけではありません。
一定の条件とは、
- 国が定める研修を修了する
- 介護福祉士養成カリキュラムを修了する
- 実務者研修を修了する
ことになります。
第1~3号まであり、第3号は特定の方のみに実施できる資格になるのでカリキュラムは数日で終わります。
第1号、第2号は基本研修(50時間の講義+基本演習)と実施研修を終了して、登録などを済ませることで認定証を受け取ることができます。
また実際に行うとなると、
- 医師の指示書
- 本人(家族)の同意
- 安全委員会の立ち上げ
- マニュアル整備
- 都道府県へ登録特定行為事業所の登録
など施設ぐるみでの環境の整備が必要になります。
指導看護師ではない看護職員などは、医療的ケアの研修制度を間違った認識で理解している場合があります。
研修を終えれば、誰に対しても介護職員が医療的ケアを実施できると思われている方もいらっしゃるので、注意が必要です。
研修が終わっても医師の指示書と同意書があり、異常のない利用者に実施が可能ということを把握しておいてもらいましょう。
吸引・経管栄養の実施で気を付けるポイントを紹介しておきます。
喀痰吸引
- 挿入は咽頭手前までが原則
- 指示書に書いてある長さを確認してそれを超えてはいけない
- 吸引圧は介護職員が勝手に変えることができない
経管栄養
- 胃ろうの状態次第で実施できない場合がある
- 胃ろうを回転させることができない
- 胃ろうは一日に一回、経鼻カテーテルの確認は毎回実施前に必要
いかがでしたか?
医療的ケアを実施できる介護職員が増えると、夜勤や普段の業務の中でも利用者さんの苦痛を軽減することができます。
しかし介護職員の専門は生活の支援です。
医療職ではない職種が医療を行うということには大きなリスクを負います。
医師、指導看護師、施設が一丸となって安心安全な環境を整備していきましょう。
これから医療的ケアの研修を受けたい!という介護職員の方はぜひ研修を受講してください。
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- 指導看護師の研修に行ってみたい!
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